2023-09-11 Mon
9時頃目が覚めた。
昨日は夜遅くホテルに到着し、移動で疲れていたのでよく眠れた。
眠気を覚ますように、窓の外から何か工事をしている音と、クラクションの音が聞こえてくる。
外を眺めると、南国の樹木が河川に沿って植えられており、「嗚呼、遠くへ来たんだな」という実感が段々と湧いてきた。
窓辺で感慨に耽っていると、聴き慣れた音楽と掛け声が、そんな愚生のメランコリーを討ち壊してきた。
「チャーンチャーンチャチャチャチャチャ、それでは手足を伸ばす運動から〜!」
相方が、最近日課としているラジオ体操のテーマだ。
健康志向は大いに結構だか、異国の街で目覚めた初日の朝くらい、もう少し穏やかに迎えさせて頂けないだろうか。
と思いながらも、結局第二体操まで付き合ってしまい、お陰で体もシャキシャキだ。
ほどほどに身体を動かせば、腹は減るのが人の道理。
「ベトナムの朝ご飯といえば、間違いなくバインミーであろうばいん。みー!」
という日本人的な正しい情報操作の思考に従い、日焼け止めを万全に塗り、いざバインミー屋へ向かう。
(昨日の一件以来、日焼け止めを塗る際には、極細心の注意を払っている事は言うまでもない。)
外へ出ると日差しが暑い。
しかし街路樹が沢山あるため日陰も多く、海も近いため風が吹くと心地よい。
日陰を渡りながら20分ほど歩き続けて、お店に到着。
歩道にショウケースと作業台が一体になった長方形型の屋台を出して営業している。
奥の家の中にフライパンなどが見えるので、メインの調理はそこでやって、屋台の上で具材を詰めるようだ。
バインミーは普通、牛肉や鶏肉などをサンドするが、ここのお店はベジタリアン向けで、肉の代わりにtofuskin(湯葉を重ねて厚くしたようなもの)というものや大豆ミートのハムを入れている。
「バインミー屋の看板、手書きがいい感じ」
道を挟んで隣に広い公園があったので歩いていくと、自転車の後ろに木箱をつけたコーヒー屋さんが居る。
ベトナミーズコーヒーを注文。
普通はベトナミーズコーヒーというのはミルクと砂糖が沢山入っていて甘いのだが、ブラックを欲していたので、入れないでもらった。
ちなみにコーヒーそのものは、甘さと引き合うように、かなり濃いめである。
歩道の縁石に腰掛けて食べていると、保育園児と先生らしき人達が遊んでいる。
この光景は日本と変わらず、ほのぼのした景色で心が安らぐ。
「キッチンカーならぬキッチンバイシクル、日本語で挨拶してくれた優しいお兄さん」
それからはひたすら街を歩いた。
取り敢えず旧市街の方へ向かい、市場を覗いてみる。
フルーツや乾物、野菜や肉などが雑多に並び、道路の真ん中に向かって競り出してきている。
東南アジア独特の甘ったるさと生臭さが入り混じったような匂いが鼻を刺激する。
肉を捌くのにまな板ではなく、段ボールを敷いて切っていたりするところなど中々豪快だ。
日本から服を余り持ってこなかったので、市場近くの服屋をふらっと覗くと、直ぐに店員のおばちゃんが電卓を持ってやってくる。
服には値札がついていないので、おそらく買う人によって値段を設定しているのだろう。
おばちゃんはこちらを日本人と見てとり、綿100%の短パンを「ニホンジンね、コンニーチワ。80万ドン(大体4000円くらい)でどうタン?パン?」と言ってきた。
日本のアジアン雑貨でもそんなにはしない筈だと思い、「私は経済振興国と呼ばれる日本国からの渡航者であり、海外を周遊する程度に若干の金銭的余裕及び時間的有余はあるものの、如何に経済振興国の民といえども、無制限に金銭があるかと云へばそんなことはなく、一小市民として、渡航前後、節制節約しながらの御国外遊となる訳であるから、別に意地悪く殊更に安くしろと言っているのではなく、あくまで常識的な感覚と判断で交渉に臨んでいる所存でいるぞん。じゃぱん。」という雰囲気を出しながら、思い切って半額で交渉した。
何回か帰りかけたり、引き止めたり、お互いの役柄を演じる値段交渉があり、結局50万ドン。
2500円ほどで購入。
「値段交渉に応じて頂き、どうもありがとう。いつの日かそなたが日本国に来られた際には、オモテナシの精神で盛大に且つ、慎ましく且つ、淑やかに且つ、たおやかにお迎え致す。くりすてる。タキガワ。」という雰囲気を出し、別れた。
歩いていると、滝が汗のように、じゃなくて汗が滝のように流れてくるので、一度ホテルに避難し、シャワーを浴びる。
血液サラサラになりたい人は、夏のベトナムはお勧めします。
日差しも弱まった夕暮れ時に、また市街地へ向かう。
ベトナム料理をヴィーガンで提供するレストランに入り、色々と頼んで食べてみる。
ホイアンにはカオラウという米麺があり、中々美味しい。
食感はうどんのような、生蒟蒻のような不思議な食感で、江戸時代に朱印船に乗ってきた日本人が持ち込んだ伊勢うどんが起源との説もあるようだ。
「これがカオラウ、野菜や香草、四角いカリカリした揚げもの(詳細不明)が入っている」
このレストランもそうだが、飲食店で働いている人の年齢が極端に若い人達のお店がある。
進学するより、社会に出て働く未成年が多いのだろう。
店長的な立場であろう、少年の面影を残した男の子は、英語も上手で良く気が利き、スマイルも良かった。
ホイアン人は人懐っこいというらしいが本当だ。
サイゴンビールでほろ酔いながら、「もし自分がこの南国の地、ホイアンに女として生を受け、もしうら若き乙女であったならば、きっとあの店長に恋をするであろう、見たかあの純情もし。」などと想定困難なもしも話を相方に喋りちらしながらトボトボと歩きながらホテルに帰り、2日目が終わった。
「レストラン前の通り、ランタンがキレイ、この街は毎日お祭りみたいだった」
(つづく)