2017-10-15 Sun
今日でタイともお別れである。起床し、荷をまとめ、タクシーでファランポーン駅へと向かう。
一番早く着く空港行きの便を聞くと、三等車だとのこと。
先日アユタヤへ向かう電車でややボロい二等車は経験済みである。
待機している列車に、ある程度覚悟して乗り込んだ。
車内には大きな段ボールを持ったおばあちゃん、制服姿の学生、迷彩柄の服を着た兵隊、白人のバックパッカーなどなど。
座席は自由席だが満員であるため、つり革に掴まる。
予想していたがクーラーはなく、天井に設置された扇風機が宿命的に生温い風を送りつけてくるのみである。
しばらく走ると、空港らしき大きな建物が見えてきたので、おそらく次が下車する駅あろうという感じで、降りる。
日本のようにご丁寧な社内アナウンスなどはない。
不親切と言えば不親切だが、車内構内どこもかしこも暴力的に増幅された音声が飛び交っていることもないので、おおらかといえばおおらかだ。
ま、とにかくそんなことも今日が最後である。
扉の横に座って人形のようなものを売っている貧しい身なりの老婆を横目に空港に入る。
流れるままにチェックイン、出国審査を終了し、あとは飛行機に乗って帰るのみ。
先日行った台湾の帰りの便では、二時間近く遅れての出発であったが、今回は定刻通りのフライトで出発できそうだ。
良きにせよ悪しきにせよ、旅には想定外な事が往々にして起こる。
けれども、それらも記憶の断片となって懐かしく思い出として回想する頃には、なくてはならなかった出来事になるのだ。
旅は人生。
人生は旅。
我が記憶に残って行くであろう出来事として起こり、葬り去られた出来事。
とりとめのない出来事として眠り、ある日突然思いも寄らず呼び戻された出来事。
そんなすべての記憶と現実の間で僕たちは日々を生きて、また記憶を生んでゆく。
この生産活動に減るという行為はない。
きっと忘れているだけだ。
愛のある記憶を生んでいきたい。
次にタイを訪れる際には、チェンマイを拠点に方々廻ってみたいと思っている。
コップンカー、タイ。
また会う日まで。

2017-10-06 Fri
今日は特に行き先を決めていなかったので、割と暇である。もともと旅というのは、自分探しの旅だとか、気分をリフレッシュするだとか、各々の大義名分があったりするわけだけれども、大抵は暇な人が行くものである。
あるいは、暇を「作って」行くという場合が多いかもしれない。
日々、国家社会においてその形成・維持に大いに貢献し、忙しく立ち働きながらもどうにかこうにか時間を工面し、いつもと違った環境の中に身を置くことで自分の生活や人生を振り返ってみる。そんな事も時には大事なのだ。
愚生は特段、日々国家社会においてその形成・維持に大いに貢献している訳ではないが、今日は旅の真髄「暇」を味わう一日としたい。
暇人といえば何だ。
もちろん朝からハンバーガーだ。
日々社会に貢献し、忙しく立ち働いている者は、朝からハンバーガーなど食べていられないのである。
ハンバーガー業界の重鎮である某Mドナルドが朝マックなるシステムを導入した時点で、朝食に適したパンはマフィンと決まったのだ。
時間に追われながら極めて合理的なスケジュール調整を求められる現代人にとって、マフィンは小ぶりで寝起きの収縮した喉にも通りやすく、手軽に素早く食べられる。
ハンバーガーなどという具材たっぷりのボリューム満点なバンズは、時間がかかって悠長に食べてなど居られないのであって、そのようなものは午前10時半以前は食うべからず、というおふれが全国に流布されたのだ。
というわけで、暇な我々はいつものベジレストランで以前から目を付けていたバーガーを午前8時に食し、当てもなく街へ繰り出した。

「ボリュームまんてん 暇人バーガー」
バンコク市内を歩いていると、何やら騒がしい。
足を止めてみると、アイドルのコンサートのようだ。
日本の某アイドルの曲をタイ語で唄っている。
多分バンコク48みたいなかんじだろう。
アイドルの追っかけが写真を撮ったり、声援を送ったりしている。
その時、「彼らもまた暇なのであろうか」という考えが一瞬、頭をよぎる。
一度冷静になり、どこまでも青いバンコクの空を見上げ、深呼吸して呼吸を整えたのち、冷静な頭で再び思案する。
いや、彼らは暇なのではなく日々タイ王国アイドル界においてその維持・形成に大いに貢献し、忙しく立ち働いているのである。
そうに違いない。
愚生はバンコクのアイドルより、バンコクのアイドルの追っかけを見る事が出来た事に感動した。

「追っかけの気分になってみる 暇故に」

「追っかけを追っかけてみる 暇故に」
それから民芸品などを物色するために商業ビルに入る。
一階は食品コーナーとなっており、日本のデパ地下みたいな雰囲気である。
しかし日本と違うのは通路の前で大鍋が煮えたぎっている事だ。
バンコクは、日本とあんまり変わらないな〜などと油断していると急にぶっ飛んだ場面に遭遇する。
暇人としては、またそれも楽しいものだ。

「バンコク版デパ地下」
徒然なるままにコーヒー屋にいったり、カオサンで服を買ったりしながらまた宿付近に戻ってくる。
今夜はバンコクラストナイトである。
今宵マッサージ納めを敢行しようではありませんか!という事になり近くのお店へ向かう。
1時間で250バーツ(850円くらい)。
お金を払い、二階の部屋に案内される。一部屋で7〜8人マッサージを受けられるくらいの大部屋だ。
早速寝転び、おばはんに背中を押してもらう。
タイマッサージは、肘や膝を使ってごりごりと筋張った部分を押したり、組体操のように体全体をひねったりするので結構痛い時がある。
今回はおばはんが上手なようでいい気分だ。
マッサージも終盤に差し掛かり、かなり大きなひねりがある施術を受けていると、突如、雄叫びが聞こえてくるではないか。
「ぐををを〜んんぬんっ!」
部屋の中が一瞬で凍り付く。
ゆっくりと隣を見ると、A氏がひねりの施術で悶絶していることを確認した。
彼女は、生物学的には雄か雌かと問えば、雌だ。
雌だから、彼女なのだ。
しかし彼女が発する声はまぎれもなく雄叫びである。
雄の叫びである。
さらに言うなら、日々国家社会においてその形成・維持に大いに貢献している訳ではないが、旅の真髄「暇」を味わわんとして異国の地バンコクにてマッサージを受けているところの雌が発する雄の叫びである。
今しがた入ってきた客は、これから我が身に降り掛かる試練について妄想し、怯えている。
彼女と愚生をマッサージしているおばはんの笑い声だけが不気味に響いている。
何とかひねりを耐え忍んだA氏と愚生は、店を後にした。

「I completed 雌としての私に帰る」
そして最後の晩餐に向かう。
初日に行ったレストランで、ビュッフェ形式の夕食が提供される事を黒板で見つけて、行こうと決めていたのだ。
レストランに着くと、たくさん料理が並んでいる。
グリーンカレーやパッタイ、天ぷらもある。
こちらの店員さんはとても素晴らしいスマイルで迎えてくれた。
味もとてもおいしい。
料理と店員さんのおもてなしの心で、最後の夜に良い思い出が出来た。
バンコクへご旅行の際にはぜひ足を運ばれたい。

「thos Vegetarian Restaurant 素晴らしい料理 パンさんありがとう また行きます」