2017-08-23 Wed
台湾といえば皮と決まった。何の皮と問われれば、それは餃子の皮の他に何があろうか。
あなたは朝8時から餃子を食べられますか?
私は出来る。
いやあなたもきっと出来るはずだ。
自分を信じてあげて。
自分の胃袋を。
二日目に伝説的なおこわと出会った界隈に、その餃子店は悠久の時を越え、うたかたの旅人たちを見てきたであろう佇まいで静かに鎮座していた。
昨日と同じように、起き抜けにふらふらと宿の周辺をうろついていると、台湾のベジタリアン料理を表す「素食」の文字を見つけた。
店先を覗くと、餃子と饅頭を売っており、店の奥では2人ばかりの女性が、皮で具材をせっせと包んでいる。
品定めしていると、女性の一人が作業を止めてやってきてくれたので、餃子と饅頭を買った。
餃子はトングでビニール袋いっぱいに詰めてくれて、後で数えると10個入っていた。
これで70元(280円)。
早速近くの公園で無職者に交じり、食らう。
しっかりとした噛みごたえがあるもちもちの皮の中には、キャベツとビーフンのようなものが入っており、塩味のあるさっぱり味でバクバクいける。
10個すべて完食してしまったが、胃もたれもない。
今日も元気に行ってきまスーシー。

「右側の緑色の看板のところが餃子店」
さて、本日は1泊2日で台南へ出かける計画である。
台北バスターミナルからバスに揺られて南へ4時間半の旅路だ。
9時過ぎのバスに乗り込むと、乗客もまばらで快適ヤッピーパラダイス状態(以下ヤッパラ状態)じゃあん!シートも倒し放題じゃあおん!
と悠々自適なスローライフを期待していたのもつかの間。
寒い。
何だか寒くない?いや確かに寒いよね?あ耐え難くない!?
と封印していた疑問形的思考が再発した。
台湾(のみならずアジア諸国)では店舗や交通機関ではクーラーがガンガンに効いていることは、聞いていたし経験したことあったのだが油断をしていた。
「車窓ごしのたおやかなる田舎の街並みをのんびりと眺めながら、せわしないこれまでの日常を顧み、己のこれからの人生について自らのハートに問いかける」タイムは見事にかき消された。
どうやら、おれは遭難してしまったようだ。
沖縄より緯度的に南の国で、それはあるいは意図的でないとしても、運転手の錯誤的な温度管理によって。
着替え用のTシャツを掛け布団代わりにしてその場を何とかしのぎ、九死に一生を得た人の面持ちで、極力恨めしい心を排除し運転手にシェイシェイを告げ、バスを降りた。
シャンティ。
台南は、台北と比べると暑さがぐっと増した印象を受けた。
温度もそうなのだが、日差しが強くて信号待ちの歩行者も青に変わるまで、みなビルの陰や街路樹の下で待機している。
ひとまずホテルにチェックインし、荷物を置いて街へ出た。
お昼を食べ損ねていたので、まず素食店を探す。
地球の歩き方を見て場所を確認するが、区画整理で道が変わってしまい、うまく見つけられない。
猛暑の中で立ち尽くしていると、50歳くらいの男性がやってきて中国語で「何処へ行きたいのか?」と言う。
地図をみせると、「わたしについてこい」というような仕草をし、先に立って歩き出した。
途中、街中にある寺院の前を手を合わせながら通り過ぎるこの男性と歩くこと5分。
ふと立ち止まって目の前の店を指さす。
まさに求めていた素食店であった。
おじさんは、お店のおばはんと挨拶を交わして「この異国から来た兄弟たちに何か食物を与え給え。合掌。」と言い、去っていった。
おばはんは「これしかないヨ。アーメン。」と片言の日本語で言い、棚から饅頭やらなにやらを出してくれた。
それをいくつか見繕い、大きな冷蔵庫で冷えた豆乳と一緒に店内で食べた。
「美味いやん、台南最高やん、片言の関西弁が思わず口をついて出てまうやないか、おばはん!」と心の中で叫び、おじさんとおばはんに深く感謝し、店を後にした。

「饅頭やらなにやら 基本甘い味付けが多い」
それから古びた街並みをふらふらとし、たどり着いたのは、街のはずれにある台南運河にかかる橋の上。
夕涼みに出てきた地元のおばあちゃんや、仕事帰りの人たちが行き交っている。
抒情的な風景に胸を打たれ、ここはひとつ歌おうではないか!ということで荷を下し演奏を始めた。
すると、鳥たちがつられたように良く鳴いてくれる。道端に座って何となしに聞いてくれている人がぽつりぽつり。
少しだけ台南の街に吹く風の中に溶け込めたような気がしたのであった。

「台南うんが~」
夜は市街地に戻って、屋台で夕飯を食べた。
沖縄そばに近い麺にそぼろのような大豆肉が乗っていて素朴な味わいである。
店は大変愛想の良い母と二十歳くらいの顔色一つ変えない仏頂面の息子で店をやっていた。
台湾では基本的にお酒をおおっぴろげに飲むことは悪しき習慣とされているのか、お酒を置いている店は限られている。
まず居酒屋というものが見受けられず、屋台に関しては絶対にお酒は置いていない。
飲みたければ近くのコンビニで自分で買ってきて席で飲めという。
というわけで、今日もコンビニで買った台湾CLASSICで乾杯しヤッパラ状態となったのである。

「息子が運んできてくれたブッチョヅーラー麺」
そして今日の旅の締めくくり、台湾に来たら露店が集まる夜市へ。
千鳥足でタクシーを捕まえ、台南の中で有名な「大東夜市」へ向かった。
沢山の露店が店を出しており、熱気と活気がすごい。
歩き回るだけで楽しいところであった。

「毎週お祭りさわぎ でもお酒はない」

「夜市で顔そりをしてもらうおばはん 恥じらいのハの字もなく勇ましいかぎり」
注1)快適ヤッピーパラダイス状態:又とない至高状態。夏休み初日の早朝に少年が感じる永遠性に似る。