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■プロフィール

MAMEFUTATSU

Author:MAMEFUTATSU
TORU(Vocal/Acoustic Guitar)とARISA(Piano,Keyboard/Chorus)による音楽グループ。

2015年7月、結成。
2016年9月、初音源集「SOUNDSCAPE」を発表。
2019年2月、2st「I Will Never Die」を発表。
2022年11月 3rd「Country driver」を発表。
全作品はitunes等各配信サイトより配信中。

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台湾紀行文(五日目)

このツボがいいねと君が言ったから8月6日は足ツボ記念日。

起床し、すぐに餃子店へと向かう。
顔なじみとなった女性店員に餃子を注文し購入。
その後、やはり顔なじみとなった酔拳使いのおこわ売りからおこわを購入し、近くの公園へ。
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「己れの空腹感をあごのしゃくれ具合で表現してみる 餃子店にて」

公園には今日もおうなとおきなの群れが何をするでもなく、手すりやベンチやその他腰かけられるというもの全てに腰かけている。
こちらも腰かけるところを探すのには一苦労である。
大きな石造りの噴水があり、「噴出したら、ここまで水がくるさかい。ここから先に入るとお前さんびしょぬれになるさかい。きぃつけんさい。」と書かれた看板の下に書かれたラインのぎりぎりにようやくもそもそと腰を下し飯を食らう。
台南へのプチトリップで疲労が溜まっており、足も重い。
ここはひとつ体力回復を図りませう。
いざ往かん!約束の地へ!!というわけで我が人生の指南書「地球の歩き方」に掲載されていた台湾マッサージ店へ向かった。

マッサージ店は7~8階建てビルの1フロアに入っており、ビルの入り口に看板が出ている。
このお店は日本人が経営しており、看板も日本語で書かれている。
早速エレベーターに乗り込むと、いささか年季の入ったエレベーターでやや身の危険を感じる。

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「無事フロアに着けば思わずブラボー!と叫びたくなる」

扉が開き緊張気味に店の中へと入ると、なんとも清潔感のある空間が中には広がっていた。
ゆったりしたソファーの前にはガラスのテーブルが置かれており、その上にはたわわに実ったバナナがある。
ご自由にどうぞ、なのかインテリアなのか迷ったのち、ここは遠慮深く思慮深い日本代表として穏やかな眼差しをバナナに向けて果物を愛でる心持として楽しむことにした。

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「愛でられる静物としての果物」

受付では流ちょうな日本語を話す台湾人女性が対応してくれ、時間も早かったからかすぐに奥の施術室へ案内された。
施術室はベットが4台ほど並んでいて、その間はカーテンで仕切られている。

施術用の室内着を渡され着替えると、マッサージ師のおばはんがやってくる。
うつ伏せになり、目を閉じると、肩のあたりから心地よい感触が伝わってくる。
それから一時間は夢うつつ、桃源郷を彷徨っていた。
足つぼも押されたが、依然台湾に来た時に受けた悶絶絶叫巡り巡る前世からのカルマを即刻ここで解消せよ的な痛みは全くなく、極めて優しく程よいしびれを持った刺激であった。
いつの間にやら施術が終わり、肩を叩かれ「フィニッシュよ、大和国のボーヤ」と告げられフラフラと部屋を出る。
凝り固まっていた身体はよくほぐされ、正しい位置に整えられたと感じる。
四肢及びあらゆる部位や内蔵器官は、これから遺憾なく機能を発揮してくれるに違いねぇぞ!とやや孫悟空風に頭の中で高らかに宣言し、ゴットハンドのおばはんと受付の女性に感謝をのべ、バナナを横目で流し見ながら店を後にした。

それから、MRTに乗り台湾のカフェ&ライブハウス「月見ル君想フ」へ向かう。
今日は台湾の音楽状況をお聞かせ頂こうではありませんかという事で、こちらの店長さんとお話しをする約束をしていたのである。
店に着きカフェスペースの机に腰を下ろす。
周りをぐるりと見渡すと台湾や日本のアーティストのポスターやCDなどが体裁よく並べられている。
ほどなくきれいな台湾美人の女性店長さんがやって来て挨拶を交わす。
ここでは1階をカフェ、地下をライブスペースとしているとの事で、地下にも降りて見せて頂いた。

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「カフェスペース 公開中の日本映画のビラとかもあった」

台湾は基本的に音楽イベントは週末(土日)に開催し、平日はあまりやらないとのこと。
また、こういった施設にふらりと立ち寄って音楽を聴くという文化はなく、集客も苦労しながらなされているようであった。
しかし日本からライブをやりにくるアーティストはメジャー・インディーズ関係なく多くなっているようで、こちらでは日本人のアーティストを呼んで企画するイベントの際には必ず台湾のグループと混合させてブッキングするという方針を採っている。
異文化の交流を願いながら運営している店長さんに感銘を受けたのであった。

店長さんにお礼を言い、あてもなくフラフラと歩いていると、街中の公園で何やら人が集っている。
中に入っていくとどうやら、ファーマーズマーケットのようだ。
有機栽培の食品や加工品が並べられた店や、フェアトレードの商品を扱う店が10店舗ほど出店している。
日本では全国でこういったイベントが開催されているが、台湾でも同じ意識を持つ人たちが活動しているのだなと実感し、うれしい気持ちになった。
VIVA 地球 !!!

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「台北のファーマーズマーケット」

公園の前に木造で趣のある店構えのお茶屋さんを見つけ、中に入る。
台湾はお茶も特産であり、ここでは本格的な鉄器で入れる国産茶が飲める。
まずお茶(茶葉)を選択し、それとは別に人数分のお湯を注文するというのが主流のようだ。
注文すると簡易コンロを持ってきてくれて、そのうえに鉄器に入ったお茶をのせておき、飲み干したらまた別容器に入ったお湯をつぎ足していくのだ。
はじめは店員さんがデモンストレーションをしてくれ、鉄器にお湯を入れてから急須に移すタイミングなどを教えてくれる。
見ていると急須や鉄器を扱う所作がなんとも素晴らしく、台湾のお茶文化の優雅さを少しだけ垣間見ることができた。
優雅な気分でお茶とこれまた美味なお茶うけを頬張っている隣の席では、同じく大和国からの観光客と思われる女子旅2人組がこの後の予定を子細に話し合っている。
詳しいことはよくわからないが、最終的な到達目標は今より断然つるつるすべすべになって帰りましょうよ!大和国へと!ということのようだった。
週末に気軽に来れる国としては最適である。

外へ出ると、日中の暑さも少し和らいできた。
ふらふらと彷徨っていると大きな公園へと行きついた。
看板を見ると、台北市街の中でも1、2番目くらいに広い敷地を持つ公園のようである。
太極拳をする人や、体育会系の奇声を発する団体、新興宗教の集いなど色んなひとが憩うまさに都会のオアシスである。
日本の代々木公園に近い印象を受けた。

ここで一つ音楽活動をしようではないか。という心境に達し、遊歩道に沿ったベンチに腰を下ろして道行く人と鳥と木に歌を歌った。

気分よく演奏していると、目の前の芝生を横切る影が一瞬目に映る。
隠れた木陰から姿を現した正体はリス出会った。
しかも二匹。
そして見事に結合している。
公の場で恥じらいもなく結合するつぶらな瞳の彼らはその状態を保ったまま、緑の茂みへと消えていった。
ここは都会のオアシスだ。
日は暮れていった。


そんなこんなで、公園近くにて衝動的な欲求に誘われるがままに食物摂取でも遂行しようではありませんか。という事になり食物摂取提供可能店をすまほで検索し、バイキング形式のややこじゃれた台湾素食レストランに向かった。
台湾は飲食店の閉店が早いのだか、こちらはラストオーダーが9時半とネットに出ており、まだ7時半だったので余裕があると思い安心していた。
が着いてみるともう台湾人の客は帰り始め、大広間も人はまばらである。
そして9時には我らと隣に居た20歳前後の男二人組が残るのみとなり、すでに明日のランチのテーブルセッティングがバイトのおばはんたちにより開始された。
男二人組は、ケーキを食べた後にパスタを持ってくるなど大いにバイキングシステムを謳歌していたので、我々も大きく構えぎりぎりまで堪能することにした。

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「食べることに夢中で最後にお慰み程度に撮ったヴィーガンスイーツ」

料理は、肉や卵が入ったものから全素(ヴィーガン)まで提供しており、種類も豊富で楽しめた。
屋台、食堂、レストランに至るまでいろんな店舗のスタイルで素食は提供され、台湾人の中に浸透しているなと感じた。
台湾は宗教という軸を出発点としたが、日本は文化や健康、食を取り巻く世界情勢などといった多様な見方を出発点として、さらに浸透してゆけばよいなと思いながら穴倉へと帰路についたのであった。

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旅なんです | 08:00:00 | コメント(0)
台湾紀行文(四日目)
起床、排便、洗顔、食堂。
台湾の旅におけるまったくもって健全なる朝の活動とは、このような流れである。

昨日の夜は、よく眠れなかった。
訳アリ部屋だという事は承知の上にブッキングをしたのであったが、こんなに寝苦しい夜になるとは。
夜中まで台南の血気盛んな若人たちが集うクラブ(たぶん)からの音や奇声が階下から筒抜けで、眠りについたのは明け方である。
パーティーに参加している者のいかにも今夜ははじけましょうぞ的な上ずった声を、パーティーに無関係な者が延々聞かされるなんて、赤の他人同士がやっているストリートファイター2若しくはシルバニアファミリーを用いての一週間営み劇場を延々と見るよりも5倍くらいの苦行だ。
というわけで、今朝はまったくもって健全なる朝の活動もそこそこに、なけなしの微笑を顔に湛え街に繰り出したのである。

今日も朝から日差しが強い。
右足と左足を交互に地面に着地させ前進するという人類特有の二足歩行を遂行していると、目に素食の文字が入る。
お店では4~5人の女性が忙しそうに立ち働いている。
恍惚の表情でお店の前へ吸い寄せられると、一人のおかあさんがまったくもって健全なる笑顔で迎えてくれる。
どうやらここは、並べられた20種類くらいのおかずを好きなだけとりんさい、そして麺やご飯を個別に注文し好きなだけ食べんさいや形式の食堂のようだ。
出稼ぎに行く前のおじさんやおばはんに交じりつつおかずを皿に盛り、ご飯を注文し、許可・無許可という概念もないであろう歩道上に設置されたテーブルで食べる。
これを毎日食べることが出来るとは、台南ピープルはなんとも羨ましい限りだ。

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「ハーパン紳士のところで麺とかご飯をオーダー、カウンターの奥におかずのお皿がいっぱいある」

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「朝から食べてもいいですか こんなにも」

まったくもって健全なる心を取り戻したところで、ホテルへ引き返しチェックアウトをする。
それから台南市街地からタクシーで15分ほどの安平(アンピン)へと向かう。
タクシーは初乗300円くらいで乗れてしまうので、炎天下の中を1時間歩くことを考えるとついつい使ってしまうのである。
安平についてはまだよく把握していなかったので、とりあえず町の有名なスポットに連れて行ってもらうように伝えた。
見た目では「台湾ムード歌謡曲愛だの恋だのてんこ盛り大全集」を愛聴していそうな初老のグラサン(ティアドロップ型)男は、エキゾチックな女性ボーカルが囁くように歌うハイセンスなエレクトロニカを車内に搭載した自らのサウンドsystemで流しながら、軽快にハンドルを握っていた。

しばらくすると、何やら人がわさわさと歩道に溢れかえっている通りの前で停車した。
「ここは、安平のオールドストリートだ。ここを歩いてぬしらのセンスを大いに磨くがよい。」と言い放ち、去っていった。
あの男のいう事だ、きっとハイセンスなストリートに違いねぇ、と確信し歩き始めた。
通りには出店が立ち並んでおり、何かの味卵(にわとり卵の3倍サイズくらい)や臭豆腐(本当に臭いのです、半径10m以内は危険区域)が売られている。

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「軒先につり下げられた得体のしれないハイセンスな何か 明太子なんちゃらと書いてある」

ふらふらと店を冷やかしていると、通りのずっと先のほうから音楽が聞こえてきた。誘われるがままに歩いていくと、車いすに座ったおばはんが歌っている。
隣には伴侶とおぼしきおじさんが軽自動車に搭載したミキサーを操っている。
訴えるように、すがるように、喘ぐように歌うおばはんのそれは、まさに「台湾ムード歌謡曲愛だの恋だのてんこ盛りもり大全集」からの1曲ではあるまいか!きっとそうに違いない!!
焼きつけるような太陽の下、大音量で熱唱するねっとりどろどろ系の歌唱法は、聴くものをアスファルトもろとも溶かす。
ややめまいを起こしながらその場を去り歩いてゆくと、またしてもねっとりドロドロ歌唱法のおばはん第二号が木陰の下で歌っているではないか!
こちらはもう嗚咽まじりの声で、完全に歌中の人物に感情移入している。
すばらしい表現力だ!
大竹しのぶに勝るとも劣らないポテンシャルを秘めいていることは見るも承知、こちらもお気楽な通りすがりの風来坊気分でいることがはばかられてくる。
スピーカーの目の前にいる母親に連れられて聞きに来たらしい少年は顔面蒼白となり、おびただしい汗が額から噴出している。
しかし、歌中の人物は嗚咽するほど悲観にくれているとしたら、歌など歌っていられるのかな?といった素朴な疑問が頭をよぎった。

きっとハイセンスな男は、自分のルーツミュージックを見せてくれたに違いない。
ぬしらはこの情緒たっぷり台湾歌謡曲と、おれのハイセンスアンビエントミュージックにおける共通項を、この台南の歴史的背景あるいはアカデミックな音楽理論的解釈によって見出すことができるのかな?という挑戦状をあるいは叩きつけられたのかもしれない!
でもお腹も空いてきたし、めんどうくさそうだったので考えるのはやめた。

安平で有名な台南スイーツの豆花店で一休みする。
ここは添加物を使用せず、昔ながらの製法で作っているという。
トッピングも5種類くらいから選択でき、愚生はタピオカと小豆を選択した。
ほどよい甘みを含んだ冷たい豆腐とともに、それらが滑らかに喉を伝い胃袋に収まると、火照った体も落ち着いてきた。

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「かえるのたまごじゃないよ たぴおかだよ」

気力も回復してきたところで再び外へ出て、風が良く通る木陰の下で演奏した。
ここでも鳥は上手に歌っていた。

一時間ほど演奏し、広い通りでタクシーを拾い、安平を後にし台南駅へ向かった。
台南駅からはローカル鉄道で高鐵台南駅まで行き、そこから台湾新幹線と呼ばれる高速鉄道に乗車し台北へ戻ることにした。
新幹線の所要時間は約2時間で、バスよりも倍以上早いのだ。
台南~台北間は直線距離で約270Kmくらいなので、東京から名古屋くらいであろうか、それで料金5000円弱。

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「新幹線を待つまったくもって元気な人 昨日はよく眠れたようだ」

車内は日本の新幹線と変わりのない、空間であり車内販売なども行っている。
駅弁もしっかりと存在するのであるが、さすが台湾、全素(Vegan)弁当もしっかり用意されていた。

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「山芋菜食弁当なり」

振動もなく快適な時間を過ごし、無事台北中央駅へ到着。

親しみが出てきたいつもの街のいつもの穴倉へ帰っていったのである。



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台湾紀行文(三日目)
台湾といえば皮と決まった。
何の皮と問われれば、それは餃子の皮の他に何があろうか。
あなたは朝8時から餃子を食べられますか?
私は出来る。
いやあなたもきっと出来るはずだ。
自分を信じてあげて。
自分の胃袋を。

二日目に伝説的なおこわと出会った界隈に、その餃子店は悠久の時を越え、うたかたの旅人たちを見てきたであろう佇まいで静かに鎮座していた。
昨日と同じように、起き抜けにふらふらと宿の周辺をうろついていると、台湾のベジタリアン料理を表す「素食」の文字を見つけた。
店先を覗くと、餃子と饅頭を売っており、店の奥では2人ばかりの女性が、皮で具材をせっせと包んでいる。
品定めしていると、女性の一人が作業を止めてやってきてくれたので、餃子と饅頭を買った。
餃子はトングでビニール袋いっぱいに詰めてくれて、後で数えると10個入っていた。
これで70元(280円)。
早速近くの公園で無職者に交じり、食らう。
しっかりとした噛みごたえがあるもちもちの皮の中には、キャベツとビーフンのようなものが入っており、塩味のあるさっぱり味でバクバクいける。
10個すべて完食してしまったが、胃もたれもない。
今日も元気に行ってきまスーシー。

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「右側の緑色の看板のところが餃子店」

さて、本日は1泊2日で台南へ出かける計画である。
台北バスターミナルからバスに揺られて南へ4時間半の旅路だ。

9時過ぎのバスに乗り込むと、乗客もまばらで快適ヤッピーパラダイス状態(以下ヤッパラ状態)じゃあん!シートも倒し放題じゃあおん!
と悠々自適なスローライフを期待していたのもつかの間。
寒い。
何だか寒くない?いや確かに寒いよね?あ耐え難くない!?
と封印していた疑問形的思考が再発した。
台湾(のみならずアジア諸国)では店舗や交通機関ではクーラーがガンガンに効いていることは、聞いていたし経験したことあったのだが油断をしていた。
「車窓ごしのたおやかなる田舎の街並みをのんびりと眺めながら、せわしないこれまでの日常を顧み、己のこれからの人生について自らのハートに問いかける」タイムは見事にかき消された。
どうやら、おれは遭難してしまったようだ。
沖縄より緯度的に南の国で、それはあるいは意図的でないとしても、運転手の錯誤的な温度管理によって。
着替え用のTシャツを掛け布団代わりにしてその場を何とかしのぎ、九死に一生を得た人の面持ちで、極力恨めしい心を排除し運転手にシェイシェイを告げ、バスを降りた。
シャンティ。

台南は、台北と比べると暑さがぐっと増した印象を受けた。
温度もそうなのだが、日差しが強くて信号待ちの歩行者も青に変わるまで、みなビルの陰や街路樹の下で待機している。

ひとまずホテルにチェックインし、荷物を置いて街へ出た。
お昼を食べ損ねていたので、まず素食店を探す。
地球の歩き方を見て場所を確認するが、区画整理で道が変わってしまい、うまく見つけられない。
猛暑の中で立ち尽くしていると、50歳くらいの男性がやってきて中国語で「何処へ行きたいのか?」と言う。
地図をみせると、「わたしについてこい」というような仕草をし、先に立って歩き出した。
途中、街中にある寺院の前を手を合わせながら通り過ぎるこの男性と歩くこと5分。
ふと立ち止まって目の前の店を指さす。
まさに求めていた素食店であった。
おじさんは、お店のおばはんと挨拶を交わして「この異国から来た兄弟たちに何か食物を与え給え。合掌。」と言い、去っていった。
おばはんは「これしかないヨ。アーメン。」と片言の日本語で言い、棚から饅頭やらなにやらを出してくれた。
それをいくつか見繕い、大きな冷蔵庫で冷えた豆乳と一緒に店内で食べた。
「美味いやん、台南最高やん、片言の関西弁が思わず口をついて出てまうやないか、おばはん!」と心の中で叫び、おじさんとおばはんに深く感謝し、店を後にした。

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「饅頭やらなにやら 基本甘い味付けが多い」

それから古びた街並みをふらふらとし、たどり着いたのは、街のはずれにある台南運河にかかる橋の上。
夕涼みに出てきた地元のおばあちゃんや、仕事帰りの人たちが行き交っている。
抒情的な風景に胸を打たれ、ここはひとつ歌おうではないか!ということで荷を下し演奏を始めた。
すると、鳥たちがつられたように良く鳴いてくれる。道端に座って何となしに聞いてくれている人がぽつりぽつり。
少しだけ台南の街に吹く風の中に溶け込めたような気がしたのであった。

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「台南うんが~」

夜は市街地に戻って、屋台で夕飯を食べた。
沖縄そばに近い麺にそぼろのような大豆肉が乗っていて素朴な味わいである。
店は大変愛想の良い母と二十歳くらいの顔色一つ変えない仏頂面の息子で店をやっていた。
台湾では基本的にお酒をおおっぴろげに飲むことは悪しき習慣とされているのか、お酒を置いている店は限られている。
まず居酒屋というものが見受けられず、屋台に関しては絶対にお酒は置いていない。
飲みたければ近くのコンビニで自分で買ってきて席で飲めという。
というわけで、今日もコンビニで買った台湾CLASSICで乾杯しヤッパラ状態となったのである。

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「息子が運んできてくれたブッチョヅーラー麺」

そして今日の旅の締めくくり、台湾に来たら露店が集まる夜市へ。
千鳥足でタクシーを捕まえ、台南の中で有名な「大東夜市」へ向かった。
沢山の露店が店を出しており、熱気と活気がすごい。
歩き回るだけで楽しいところであった。

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「毎週お祭りさわぎ でもお酒はない」

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「夜市で顔そりをしてもらうおばはん 恥じらいのハの字もなく勇ましいかぎり」

注1)快適ヤッピーパラダイス状態:又とない至高状態。夏休み初日の早朝に少年が感じる永遠性に似る。

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旅なんです | 17:00:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
台湾紀行文(二日目)
なんでもっと早く出会わなかったんだろう。

そんな乙女心から二日目はスタートした。
「なんでもっと早く出会わなかったんだろう」とは、お互いを運命の相手と見定めた男女が現在よりいささか前に出会っていれば、この幸せも倍増ッピーになっていたのいたのにぃ。
という時間軸を超越せんとする倒錯的な思考に沈殿した際に発する言葉である。
そういった意味では、愚生も同様だ。
ただし出会ったものが違う、女ではない。
何に出会ったのか。
おこわである。

愚生は元来おこわという食べ物には一目置いていた。
人に会い、好きなミュージシャンは誰かと問われば「ビートルズはまず好きだよね」と答え、
次の町で人に会い、好きな日本の山はいずこかと問われれば「富士山はまず好きだよね」と答え、
その次の町で人に会い、好きな食べ物は何かと問われれば「おこわはまず好きだよね」と答えるのが常であった。
そんなおこわ好きが出会ってしまったおこわは、いまだかつてなく美味であった。

ゲストハウスで台湾初日の朝を迎え、
「わしはお腹がすいた。われはすいたか。」「わしもすいた。ほなたべいこか。」という朝の徒然なるオシャンティーな会話を楽しんだあと、着のままに町へ出た。
ふらふらと食料を求めてさまよっていると、屋台が何軒か集まっているやや活気のある地帯を発見した。
地元民だらけの地帯をやや警戒しながら歩いていると、屋台の店主の中でもやや若い男が売っているものに目が留まった。
「ややや!こいつはもしかしておこわではあるまいか!」
とやや興奮状態となり震える手で台湾ドルを男に差出し、需要と供給からなる一連の経済活動に加担するに至った。
手に入れたとなれば、逸る気持ちを抑えることはできない。
早速屋台の前でビニール袋に入れられたそれを割りばしでほじくり出し、食らいついた。
もっちりとした触感、香ばしいもち米の香りが口の中に広がり、台北の路上にて天国への階段に片足をかけた。
これは、毎日食べてもいいね。絶対飽きないよね。あなたはどう思う?おこわのことどれくらい好き?と道行く人々に同調を求めたくなる衝動を抑えつつ、ゲストハウスに引き返した。

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「伝説のおこわをよそるやや若い男 その足さばきは酔拳のようだ」

さて、本日の行き先は台北から東へバスで1時間30分くらいのところにある九分(きゅうふん)という町である。
台湾の観光といえばココ!というくらいに有名な場所で、実際にバスから降りると、大勢の観光客でにぎわっていた。
石畳の道沿いには所狭しと豆花を売る店や雑貨屋、謎の卵を店先で煮込む店などなどが立ち並び、色あせた地面と対照的な色彩が軒先に溢れている。

海を見下ろせるテラスがある喫茶店に入り、コーヒーを飲んだ。
一日で東京からこんないい所に来れるとは、素晴らしい。いや人生っていいねっ!この手すりとか至って台湾ぽいし!!
と台湾の手すりについて何ら知識はないけれど、遮二無二色々なことを絶賛したくなる気分になってしまうのが九分の魅力である。

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「喫茶店からのながめ」

九分を後にして、お昼過ぎに台北市内へ戻ってきた。
日本を出てからゆっくりした食事をしていなかったなので、落ち着いた所で食事しませう、ということになり、かねてから目星をつけていた「元禾食堂 Flourish」というお店へ入った。
内観は白を基調として清潔感があり、開放的な窓から通りもよく見えて、外国人でも気軽に入りやすい雰囲気である。
メニューはヴィーガンに対応しており、まず主菜を選びセットにすると玄米とみそ汁がついてくる。
なんと台湾でみそ汁に出会うとは!
遠い異国の地で唐突的かつ衝撃的な再会。冷静と情熱と味噌のあいだをしばし彷徨っていた。
ここの料理は日本人の舌によくあうのではないかなと思う。

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「麻婆豆腐と野菜モリモリセット」

お腹も満たされ、かなり気力も充実してきた。
したらば楽器を演奏しながら歌を歌いに行きまっしょい、ということでサンセットスポットとして名高い淡水(たんすい)に向かった。

台北中央駅から地下鉄MRTで北に向かって約40分で到着。
改札を出ると、芝生が広がる海に面した公園が見える。
公園と街の間の遊歩道沿いにはお店が並んでおり、がやがやと観光客や地元民が行き交っている。
その中で絵を描いて売るおじさん、キーボードを弾いて歌っている女性など何人かの芸人たちが活動している。

豆一行は遊歩道が少し開けたところに陣取り、演奏をした。
海からの風が涼しく気持ちよく歌っていると、あたりが夕焼け色に染まっていく。
なんだかあっという間に遠くに来たな、という気持ちが湧いてきた。
一通り歌った後、駅の近くで40才前後の男性がCDを購入してくれた。
どうもありがとうございました。

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「うたう」

知らない街に来ると、一生に一度しか会わないであろう人に出会う。
自分と相手の一生の中で本当に一瞬間のことだけれど、その人の人生に幸あれと願いたくなる。
そんな旅が好きだなと思っている。

疲れた体と感謝の気持ちをMRTに預けて帰途に着いた。

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「のむ」

つづく。


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旅なんです | 08:00:00 | コメント(0)
台湾紀行文(初日)
夏の盛りに台湾へ行こうと思い立ったのに、特に理由はない。
理由は行くと決めてからついてきた。

出発前に土地について色々調べていると、台湾はインドに次ぐベジタリアン大国だという。
動物性の食品を摂取しない愚生にとっては、この上ない(インドがある)お国ではあるまいか!
台湾ではベジタリアンの食事のことを素食(スーシー)という。
したらば、ぜひそのスーシーとやらを食しに参ろうではあるまいか!

というわけで、うっきりもっきりしながら気分上々で成田から台湾は台北桃園空港へと旅立った。

約3時間のフライトを終え、午後4時前に無事到着した。
思ったよりも暑くない。沖縄本島より緯度的にはだいぶ南に位置しているので、
もっと気だるくまとわりつくような空気を含んだ気候を想像していたので、拍子抜けした。

さて、程よく拍子が抜けたところで、空港から台北中央駅へ行くバスへ乗り、
そこから地下鉄(MRT)で今回の旅の拠点であるゲストハウスへ向かった。
ちなみにMRTの乗車券は日本のように紙の切符ではなく、「トークン」というICカードが内蔵されたプラスチック製のコインである。
本当にこのおもちゃみたいなコインで、あの無機質で非人情的でいかなる過ちも許さない姿勢を保つ自動改札機を通り抜けることができるのかやや不安!
入国審査よりも張り詰めた緊張感が愚生の中に膨らんでいくっ!
でも普通に通り抜けられた。

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「青いコインがトークン 喜びを隠せない女」

台北市街地にある4~5階立てのビルは古いものが多く、たいてい1階は店舗や事務所として営業しているのだが、2階以上はどのような使途の空間が展開しているのか分からない。
そして2階への入口が非常目立たなくて、ちっさい。
英知を備えた勇気ある賢者よ、複雑化し歪曲した盲目的なこの都市構造の中で、土着神がベールで覆ってしまった秘密の扉をおまえは見つけることができるのか、果たして。
という具合だ。

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「ゲストハウスの入り口 MANGOの文字がマンゴー色」

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「ゲストハウス屋上からの景色 通り向かいの2階以上は謎の空間」

われらがお宿「MANGO 53」もフロント及び客室が2階以上にあり、注意していないと入り口を通り過ぎてしまう。というか豪快に通りすぎた。
入り口についたインターホンを押し、「本日から宿泊を申し入れているジャパニーズでそうろう。その扉開け給へ」というと、施錠が開いた。
ひとしきり設備を説明され、部屋に戻る。
部屋には窓がないが、エアコンもよく動く、臭くない、騒音もない、という事でまずまず良いんじゃない?
ゲストハウスのオーナーもメールでビックリマークとか使っていたけれど、イメージしていたよりはまずまず陰気なんじゃない?でもまあ、それも良いんじゃない?
と自らの心のうちに疑問形で語りかけた。

さて、心のうちで一通りの質疑応答を終えたところで、早速スーシーを食べに行かんっ!
と気張りつつ、日本のお友達から教えてもらったお店へ歩いて行った。

お店へ着くと8時頃だったがもう店じまいの準備をしている。台湾は飲食店の閉店が日本より少し早いようだ。
店先ではおばはんが「売れ残りのお惣菜在庫一掃セール」を展開している。
通りに向かって、ものすごくでかい声で「是非ぬしらの購買意欲を態度として示して頂きたい旨」を訴えている。

このお店は町の食堂といった雰囲気で、自分の好きなものを並べられたトレイから好きなだけ取ってその重量で清算するスタイルなのだが、
そちらはもう終わってしまっているので、おばはんのセール品の一つである長細い饅頭のようなものと、隣の屋台で売っていた豆花(トウファ)とよばれる台湾の豆腐デザートを買い、店内で食べた。
饅頭の皮はもっちりとした触感であり、具材の中身は定かでないが、青菜やもやしなどをピーナッツのような甘いペーストで絡めたものが入っていた。
中々おいしいんじゃない?とまたも疑問形になりたがる脳をなだめつつ、初めてのスーシーに満たされた。

宿への道すがら、おばはんはややジャイ子に似ていたな。でもジャイ子は繊細なタッチの少女漫画をこよなく愛する人間だ。
それよりおばはんは頭より身体が先に動くアクティブタイプだ。だったら、ジャイアンのお母さんの方に似ていると考えた方が正しい。、
などと浮かんでは消えてゆく刹那の思いを巡らしながら、初日を終えたのである。

つづく。

注1)うっきりもっきり:多大なる期待感ゆえに浮足立ちながらもその胸の内を他人に悟られまいと平静を装い佇むさま。

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旅なんです | 20:04:46 | コメント(0)