2016-08-30 Tue
小5「セミは長い間つちの中にいて、一週間で死んでしまうなんて、かわいそうだよ。」大人「そうだね、そんな時はね、しがらみ・ねたみ・憎しみが渦巻き、欲望という名の幻燈の中をさまよい続ける有象無象の輩がはびこるこの俗世において、神のお導きにより一寸のうちに解脱したセミは、やっぴーはっぴーまるもうけだじょおん!と思っていることであろう、と考えればいいのではないかな。」
小5「そうだね、おいら何だか悲しくなくなってきたよ。あ、ポケモンゲット。」
さて我々MAMEFUTATSU一行は、新しきCD「SOUNDSCAPE」発売にともなう、いわゆるプロモーションの一環として、
西東京市は田無にある商業ビル「ASTA」にてFM西東京主催の演奏公開収録を敢行してきたのである。
このイベントは午後の2回に分けて演奏を行い、そのうちの数テイクを後日ラジオで放送するというもの。
無事にリハーサルも終わり、案内された畳20畳ほどのたいそう大きくてまこと快適な楽屋でごろりとしたり、ヨガをしたりとゆるりと出番を待っていたのである。

「とりあえずおすましするので、左のほうをむくね。一面のひまわり畑を見るように。」

「かぶっている、いろいろなものがおれにかぶっている、主役であるおれに。」
そしていよいよ第一回目のステージの時間となり、意気揚々とステージに向かい、アナウンサーの軽快なオープニングトークのあと、演奏を始めたのである。
しかし、聴衆の魂を震わすべき我が喉の変化に気づいたのは、そう遅くはなかった。というか1曲目から「あ、これやばいかもしんない」というほどに、声がガラガラと音を立て、喉の奥に異物感があり、思うように声が出ないのである。
そのまま、4曲を生きた心地がしないまま何とか歌いきったのであるが、結果はさんざんであった。
第一ステージを終え、例のたいそう大きくまこと快適な楽屋へ戻るころには、「おれにはこんな立派な楽屋は身分不相応だ。まったくおれはいやしい歌い手の風上にも置けない輩なのだ。味噌のない味噌田楽なのだ。」と自己嫌悪に駆られていた。
しかし、ここで腐ってやけをおこして、ケニアあるいはタンザニア方面へ高飛びし、生のキリンを鑑賞し、「うわーほんとうにくびがながいや」などと感心しながら、心の傷をいやすほど私は落ちぶれていなかった。
すぐに気持ちを切り替え、今できることを最大限に行い、もてる能力を引き出すのだ!ギャラももらっている!と決意した。
まずは喉の不調には、のど飴だ!幸いにもここは商業ビル!各種薬品や食料品、飲料が取り揃えてある。
ドラッグストアへ出向き、龍角散のど飴をゲットだぜ!そしてホットレモンをゲットだぜ!さらに喉には油がよいと昔渋谷の某ライブハウスで共演した某女史が言っていたことを思い出しカラアゲクンゲットだぜ!ポケモンゲットだぜ!(あそうですか)
以上のものを舐め、飲み、食べたのち、「やることはやった、あとは神のみぞ知る」との思いで、いざ第二ステージへ。
結果。
神は私を見捨てなかった。喉は息を吹き返し、歌に生命を宿した。
最後の曲を歌い終えたあと、観客からあたたかな拍手を頂いたときは、「あぁ、俗世もいいね。捨てた世じゃないっすね」
と感無量であった。

「MAMEFUTATSUのギターと歌唄いのほうは、勝手に沈んだり明るくなったりして、メンバーとしては少しうざいよっ♡」

「お守りとしての龍角散とともに」
またね。